サッカー:ドイツ教育事情⑤

 まもなくサッカーW杯。楽しみにしている方も多いだろう。日本はサッカープレイヤーもファンもグッと増えた。私がドイツに駐在していた頃は、ヨーロッパで活躍する日本人選手は数名だったが、今ではブンデスリーガの各チームに日本人は珍しくない。気候も食べ物も違う国でがんばっている姿を想像するだけで思わず応援したくなる。

 国技だといっても、街のあちこちにスタジアムやサッカー場があるわけでもない。もちろんドイツ国民だれでもサッカーは大好きだが、いったいどこでそれだけ上手になるのだろう? 知人に聞くとやはりクラブチームだという。練習場所は運動場やアリーナというより河川敷だと聞いて納得した。広大な川の河川敷は格好の練習場所、試合場所だ。

 

 親善の名の下に、私たちもチームを組んで試合をした。相手はクラブやサークルではなくご近所の寄せ集めチームだ。仕事が終わって午後8時ごろから出発してのナイターゲームが多かった。行った試合数は数え切れないが勝った記憶がない。

 ある寒い夜、雪がちらつく日だった。それでも試合が組まれていて、正直「やめようぜ」と思っていたら相手の平均年齢が60歳以上という情報がもたらされ、これは初勝利か!と下心を丸出しに試合に赴いた。・・・ところが・・・

 

 強い!縦にも横にも大きな男がすごい勢いでゴールを目指して突き進んでくる!私はディフェンスだったが軽く吹き飛ばされた。体力も勝利への執念も相手の方がはるかに上回っていた。ナイター設備が不十分だったこともあって薄暗く、私たちはこっそり全員出場した。1人増え2人増え・・試合終了寸前にさすがに相手も気づき文句を言い始めた。11対18ぐらいだったろうか。それでも勝てなかった。

 

 試合後には必ずカルトエッセンとビールを飲んで互いの健闘を讃えあう。これが楽しい。健闘、というレベルでもなかったし、まさに総力を上げても勝てなかったことでドイツ滞在中の1番思い出深い試合になった。「おまえたちが束になっても負けないよ!」齢60超の鉄人たちがそう言って笑っているように思えた。

 

 ドイツにいると理不尽なことはたくさん起こる。いやドイツに限らないだろう。ある役所のA窓口はまずB窓口に行けという。Bに言ってみるとAの書類が必要だと追い返される。困った困った・・とすごすご帰ってしまえばそれまでだ。どちらの窓口でもいい、「Aに行けばBへという!Bに行けばAからといわれる!!どっちなんだ!!!」 そう言い返すことで困っていた問題がたちまち解決することがある。意地悪なのではない。ドンキホーテではないが闘いを挑んでくる者・立ち向かってくる者・前へ進もうとする者に敬意を持って接してくれる。騎士道精神というのだろうか。それを知るまであるいはできるまでに1年以上かかったけれど。だからドイツは大好きだ。理解し合うために闘いも必要だ。

 

 相手は強い!しかし、がんばれ日本!!オフサイドの瞬間を笑顔で迎えてもらいたい。