2つの祖国:ドイツ教育事情①

 インター校にドイツをルーツに持つ生徒がいる。懇談会で保護者にお会いすると懐かしいドイツ語で挨拶ができる。

 

 ここにいると文化も慣習も混ざりがちで、何が1番いいとは言えない。日本の教育システムは世界一だとずっと自信を持ってきたものの、ここで日本に無いものにも気づかされる。

 

 ドイツ人は頑固だ。規律正しいところは日本人と似ているが、やはり少し違う。

 

 現地で学校に勤めて困ったのは画鋲だ。もともと壁に絵を貼るという習慣が無い。

 

「絵は額に入れて飾るものだ」

 教室の壁は絵や作品を貼るようにはできていない。レンガだ。それでも日本人学校だから、数少ない木部を見つけて貼ろうと努める。ドイツ製の画鋲は、ちょっと力をこめると針の部分(芯)

が突き抜けて指に刺さる。とても痛い。

 どうして指が当たる部分がこんなにやわなのか? 

「画鋲とは木に刺すものではない。コルクかスポンジに刺せ」

 

 次にはしご。脚立が重い!!!まるで鉄の塊だ。どうしてこんなに重いのか?運べないではないか!

「はしごとはそういうものだ。重くて頑丈なものなのだ。」   

 ああそうですか。

 

 机も重い。椅子も重い。日本の製品がいかによくできているかがわかる。幸い掃除は専門業者が行うので生徒は机や椅子を運ぶ必要は無い。

 

 静かな洗濯機→必要無い。彼らは家の中で洗濯などしない。だからうるさくてもいい。日本の製品が売れないのは、過度な機能が邪魔をしているのかもしれない。日本人は、痒いところに手が届くが、時々鬱陶しく感じているのだろう。いや私たちが製品の機能に甘えて静かで軽くてあたりまえと思いこんでいるのかもしれない。

 

 必要なもの、国の文化として大切なものは素晴らしく機能美溢れたモノづくりをするドイツ。その代わり必要ないものは作らない。

 スパッと割り切っている。その割り切り方は好きだ。

 これからドイツで暮らす方々が羨ましい。伝えて差し上げたいことがたくさんある。もう一度行きたいと思いながら時が経ってしまった。

 

 日本は母国 ドイツはちょっと頑固な父国(Vater land) 2つの祖国があることを幸せに思う。