冬至に

 冬至に心身と身の回りをリフレッシュするといい、そんな話を聞いて家を片付けた。共働きで日中家にいない身としては豊かな時間だった。本を処分したい、というよりも目につく範囲にスペースを創りたい!そんなイメージで片付けを開始した。

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 こういう作業には情は禁物で、手にした本を処分するか置いておくかの判断は1秒以内である。そう決めた。中身をパラパラ確かめなければならない本は置いておくべきだろう。古くは自分の大学受験時代のものもあった。この中身は今でも生きて使えるのか?旅行本などは、紹介されているお店は今でもあるのか?など考えてしまう。子どもの事典類はすでにレトロ感が否めない。笑ってしまいそうだ。

 

 もちろん1冊1冊思い出はある。家人のもの以外はどんなシチュエーションで買ったかなど結構細かに覚えている。こう言っては悪いが家人がいない間に家人のものはあっさり処分の袋に入れられる。本を手放すブレーキになるものは「思い出」である。子どもとの思い出や海外生活で手に入れた恋しかった日本語の本は捨てがたい。

 

 海外にいた時、好んで読んだのは内田康夫さんの推理小説である。プロットを作らない作家を自認されていて、そう思わせる展開の作品も幾多ある。主人公が突然死んでしまったり突如今後の主役が現れたり。殺人の顛末よりそこが面白かった。お若い頃の作品で「これしかない!」という展開を閃きで描かれたという後書きを読んですっかりファンになってしまった。・・・1冊1冊の本にそういう自分のヒストリーがある。

 

 今や乱読という言葉を聞かない。本を片手に、というよりスマホで読む、読み上げてもらう文化となった。一度耳で聞く文学を体験してみようと思うし、不遜にも書いてみたいとも思う。

 

 そういうわけでだいぶ処分行きしたつもりだが、そんなにスペースが空いた気はしない。まだまだ思い出が捨てられない。しかし、カボチャも食べた、柚子湯にも浸かった、リフレッシュはできたつもりだ。新しい年に向かおう。