雪国

 雪深い地域に勤務したことがある。我ながらよく県内(外国)ウロウロしたものだ。おかげで実体験でその土地の教育を比較できるが、おそらく雇用者の見当局にしてみれば不要な能力だろう。教師は地方公務員である、1つの地域で永く貢献すべし。比較はならん、その地域の良さがある。そのとおり!どこが良いとかいう話はともかく、それなりによく適応した。

 

 雪の地域には2年間勤務した。阪神淡路大震災で被災した次の年度だ。震災の前に試験を受け、その後被災したのでその年の人事はストップすると思っていた。勤務地がこんなにひどい状態で転勤などあるものか、と。卒業式が終わって、後片付けしている時に急に転勤を告げられた。え?と我が耳を疑ったけれどもう後の祭り。まさに後ろ髪を引かれてその学校を去った。

 

 地震の後の暮らしは必死すぎてよく覚えていないけれど、被害は淡路・阪神地区に集中していて六甲山を越えるとそうでもなかったか、当日逃げる道すがら車を洗っている人を見て驚いた。その年は雪もよく降り、しばらくは実家から朝4時に起きて阪神方面に向かったり、学校で泊まったりしていた。本格的に生活が落ち着いたのはもうGWも終わったころで、失ったものの大きさに気がつき始めたのもその頃だ。暮らしそのものは平和だったけれど、その平和を受け入れられなかった。自分たちだけが平和な場所にいることが許せないとでも表現しようか。曲がった気持ちである。生活者としても仕事人としても軸足はずれていた。

 

 そうして迎えた次の冬。やはり雪が多く朝停めた車が、帰る頃には雪だるまになって同僚の車とつながり、わからないとか、やっと車を出せる状態になって強行発進するとしばらくして屋根が温まり信号で止まった途端にその雪がフロントウインドウに雪崩れ落ちてきたり・・ここに住む人なら絶対にやらないであろうミスを数多くやった。家にいる妻は妻で初めて「雪かき」を体験し、毎日の仕事となると「これは相当な労力だわ」と根を上げていた。朝雪かきができていない家は相当目立つ。落雪、除雪、本当に雪は厄介だ。

 

 そんな地域だったので2月ごろの体育は全てスキーだった。近くのスキー場で全員スキー。おっと、自分が何年かぶりのスキーなので猛練習しなければならなかったけれど、◯営スキー場は「研修」名目で無料で自由に滑らせてくれた。リフトもフリー。短い2年間の暮らしだったけれどおかげで一生分スキーはできた。

 

 この雪パワー。正しく言えば雪に向けるマンパワーは夏に活かせないのだろうか?そう誰もが考える。