ある学校の話③

 この学校には1年間しかいなかった。しかし忘れられない。自分を1番変えてくれた学校でもある。ちなみに以前書いた「ある学校」とは違う。どちらかといえばリッチで有名な場所にその学校はあった。私がいた年の新入生は69名。職員数は69名。普通の公立小学校では考えられない数字だ。もちろん教員ばかりではない。介助員さん、指導員さん、看護師さん、・・・フルに加配してもらってその数なのだ。

 

 業務改善のためには業務を減らすか人を増やすか・・と議論されることが多いが、人を増やせばいいというものでもない。まず全員集合ができない。毎学期の最終日だけ、強引に集まって校長先生のお話を聞く。職員室に2列でぐるりと一周円ができる。年に3回だけ私たちはチーム全員が顔をそろえる。だから毎日の緊張感は半端ない。隣のクラスの先生とも廊下ですれ違いざまに立ち話で打ち合わせをする。ある学年は朝早く勤務時間外に円になって打ち合わせている。

 

 見にこられた方々が一様に驚くほど、モノや人が動いていた。その勢いが空気の波で押し寄せる、それは働いている我々も感じていた。職員室の机にゆっくり座れるのは休日に出勤した時だけだ。しかし楽しかった。みんなの目標が1つだったからで、憧れだったからで、やってもやっても届かない遠くにあったからだ。

私も転任したばかりではあったが、この楽しい忙しさを少しでもなんとかする立場にあったので、打ち合わせを全て「ミーティング」と呼び、ショートとミディアムとロングの3種類に決めた。ショートは15分 ミディアムは30分 ロングは1時間。目安の時間を決めたことで少しメリハリがついた。続いてファシリテーションの研修をした。企業研修をしている方にお願いした。延々と語るのではなく、決めた時間に伝えたいことを伝える。これは授業に活きた!以来この研修は大切にしている。学校現場におススメだ。

 

 まだコロナがなかったけれど、69名が一度に入る宴会場は限られていてしかも一人一人が話す機会などない。もう2度とこういう経験はできない学校だ。そういう大きな組織の中で、校長先生がいつも一人一人に声をかけておられていたこと。教頭先生の危機管理が完璧だったこと。のちの自分にはとても役に立った。あることでちょっと腐っていた自分だったが、この学校との出会いは刺激的ですぐにシャンとした。この学校との出会いがなければ今の自分はない。感謝している。