ICT教育④:個別最適化学習

 今は「個別最適化」学習といえば、AIや優れたICT教材によるものがイメージされる。しかし随分前からそれを実践し、見せてくれた人がいる。娘が習っていた音楽の先生である。3歳からお世話になってきたが、同じ年頃の子どもたち一人ひとりに違う課題をくださった。しかも次から次へ。親にもその知識がないとこなすにはしんどい作業だったろう。幸い音楽の教師だった妻も、素人の音楽好きな私もとても興味を持ってそのレッスンに引き込まれた。作曲のコースになってからはなおのこと。チームでアンサンブルする際のパート分けや編曲は、どう考えてもそれ以上のものはない輝きを放っていた。そして結果もついてきた。結果がついてきても決して傲慢なコメントをしないように子どもたちには釘を刺してくださった。娘やその同級生たちの学びに向かう姿勢は、そうやって鍛え上げ創っていただいたものと思う。

 

 教育者として真似をしようとしたができない!現下の40人学級制度では人が多すぎる、また教科も多い。言い訳ばかりを考える自分がいやになり、全てにわたっての「個別最適化」は不可能だと思った。でもいつかはやってみたい。今でもそう思っている。やはり信頼する先生の見立てと叱咤激励には、AIとて敵わない気がする。期待される力を出せない時は人である以上もちろんある。そんな時AIは叱ってくれるのだろうか?「今のところ、もう30回引いてらっしゃい!」と叱咤激励してくれるだろうか?・・今なら虐待って言われるのだろうか。

 

 せめて、とこんなこともあがいてやってみた。宿題ノートの一元化・自由化である。同じような実践をやられている先生方はたくさんいらっしゃるのではないかと思うけれど。教科のノートは授業の板書と授業中の問題にとどめ、宿題提出用ノートを方眼ノート1冊にした。内容は完全に自由にするのではなく、最初の1時間で見本をコピーさせて方眼(マス目)の使い方を教える。慣れてくるとさまざまな使い方を子どもたちも「発明」する。そのころを見計らって1ページ1ポイントのポイントをつける。さらに慣れたころボーナスポイント(工夫したノート作りや美しいノート作り)を与える。結構低学年にも使えた。まねる・続ける・工夫するかつての子どもたちはよくくいついてくれた。1年も終わろうとするころ、このポイントってどうなるの?と聞いてくる。うやむやのうちに1年が終わる。「よくがんばりました!」

 

 娘の先生の足元にも及ばないが、少子化時代の学校では人による個別最適化はもっとやれそうに思う。再編・統廃合と言葉が飛び交うが、小規模校の良さをもっともっとPRしてほしい。